芙蓉会病院

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となりのアート 第1回 絵画「いのち」のこと―描きたいなと思った瞬間もう描いている―

当院の入り口近くに展示している絵をご覧になりましたでしょうか。タイトルは「いのち」。カラフルで、近くで見ると細かな模様が書き込まれていて、見ていると引き込まれるような絵です。その絵を描いた作者は、工藤修子さん。当院に通院されています。

工藤修子さん(以下、修子さん)に、主治医の工藤医師(以下、工藤)が絵画「いのち」のことや、絵を描き始めた小さいころのことなどを聞きました。

この連載は全3回でお送りします。今回は第1回/全3回です。

 

第1回 絵画「いのち」のこと―描きたいなと思った瞬間もう描いている―

工藤
鉛筆で描き始める?まず下書きをするんですか。

修子さん
「いのち」は下書きは全くしてないです。フフフ。

工藤
この絵は描き上げるのにどれくらいの時間?例えば、できあがったって思うのって、それも感覚なんですか。

修子さん
自分が満足というか、その、執着。

工藤
この絵だったら、無限に、永遠に終わりがない。例えば、ね、一年後とかに、ちょっと加筆したいと思うことがないくらい「終わり」っていうのが、ちゃんとあるんですか。

修子さん
この絵は、もう加筆しようとは思わないですね。

工藤
へえー。

修子さん
うん。

工藤
この作品の制作には、どのくらいの期間が?

修子さん
これは大体制作期間は一か月くらいですね。

工藤
一か月の間に、ずっと考えているんですか。

修子さん
私の場合は、いろんな事考えていて、この絵のことだけじゃないことも考えますし。

工藤
日常をしながら?

修子さん
しながら。

工藤
描いてみようとかって?

修子さん
はい。絵によっては本当に寝かせるとかします。

スタッフ
寝かせるって、描かない?

修子さん
はい。描かない時期もあったり。どうしても行き詰まってしまって、やめてしまおうと思いながら描いて、出来上がった作品とかもありますし。

スタッフ
あー、なるほど。

工藤
俺たちが、やめようと思うのとは全く違う感覚ですね。

スタッフ
うちら、だって、描いてすぐ終わるじゃないですか。ハハハハハ。

工藤
描いて終わりか、途中まで描いてなんだか分からないからやめようとか、もう無理だからやめようとか、そういうのとは違う。そのあたりが面白いよね。

スタッフ
描き途中で終わったものって、あるんですか。

修子さん
いっぱいあります。

スタッフ
そうなんですね。

修子さん
結局その、描くのをやめてしまってそのままの作品もありますし。

スタッフ
未完ってこと?

修子さん
未完っていうか、本当に、作品にもならない。

工藤
寝かせるというのは?

修子さん
寝かせても、寝かせても、結局手が付けられなくて終わってしまった作品とか。

スタッフ
一回終わって、寝かせて、また書いて最後まで終わったのも?

修子さん
それが、「毒づく」。

スタッフ
あー、なるほどね。

修子さん
フフフ。

工藤
(絵の左下を指しながら)うさぎか猫か。

修子さん
フフフ。そうですね。猫の形。

工藤
これは、あえて動物の形に描いているんですか?

修子さん
いや、あの狙って書いているわけではなくて。

工藤
でも、猫だよね。

修子さん
描きたいなと思った瞬間もう描いちゃってるんですよね。

(つづく)

次回は「第2回小さいころから絵をかくのが好き」です。

2024.4.26

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